
「勤める会社の企業型確定拠出年金に加入してるけど、どういう仕組みだったのかを覚えていない」、「年に1度、運営管理機関からのお知らせを見るたびに思い出すだけ」、そういった方が多いと思います。
加入時の説明会では、生活の状況によって、都度「見直し」が必要ですという話が、きっとあったと思います。投資は自身の資産が今どのような状況にあるのか、確認できる環境を作ることが大切です。
自宅のあの棚をみれば、資産を確認できる書類が揃っている、スマホでアプリやログインURLで確認できるようになっている、といった環境を整えなければ、実際には思い出すこともなくなってしまうのではないかと思います。
今回は確定拠出年金の見直しを考えるきっかけになればと、確定拠出年金の基礎や運用のポイントをご案内していきます。
確定拠出年金の仕組み
確定拠出年金制度は、加入者が積立金の運用方法(預貯金・信託・株式・生命保険・損害保険等)を選定し、60歳以降にその運用実績を給付額として受け取れる制度です。
確定拠出年金には、個人型と企業型があります。企業が取り組む確定拠出年金が企業型確定拠出年金です。個人で取り組む個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)については、関連記事でご案内しています。
確定拠出年金制度は、加入者が積立金の運用方法(預貯金・信託・株式・生命保険・損害保険等)を選定し、60歳以降にその運用実績を給付額として受け取れる制度です。 確定拠出年金には、個人型と企業型があります。個人で取り組む[…]
年金ってそもそも何のこと?

企業型確定拠出年金は漢字9文字、とっつきにくい名前です。企業型確定拠出年金の仕組みをまずは言葉の意味から捉えてみましょう。
「確定拠出年金」の「年金」から意味を確認していきます。年金がつく言葉はいくつかあります。
・ 確定拠出年金
・ 確定給付年金
・ 厚生年金
・ 国民年金
・ 企業年金
・ 個人年金
年金とは、毎年定期的・継続的に給付される金銭のことです。年金という言葉の中に、「毎年定期的、継続的に受け取れるお金」という意味が詰まってるというイメージが良いと思います。
英語では、pension(ペンション)やannuity(アニュイティ)と言います。
確定拠出とは
次に「確定拠出年金」の「確定拠出」の意味を確認していきます。
拠出が確定しているように読み取れますが、拠出とは、特定の目的のため、金銭を出し合うことです。年金制度の運用のために毎月決まった掛金を出し合う仕組みといえます。
なお、拠出に並ぶ言葉として、給付という言葉があります。お金やものを与えるという意味で、確定給付年金という仕組みもあります。こちらは確定給付なので、将来受け取れる金額が確定している仕組みです。
初めて確定拠出や確定給付という言葉に触れたとき、理解するのがとても難しかったことを覚えています。
企業型確定拠出年金の目的は?
年金と名前が付いている以上、将来、毎年定期的・継続的に給付が受けられることを目的としています。国民年金、厚生年金に加えて、将来の自分への備えです。
実際に確定拠出年金は、原則、60歳まで中途解約はできません。加入者が60歳になるまで、払い込むお金は運用されながら、拘束され続けるのです。
企業DBと企業DC
企業型確定拠出年金は、企業型確定給付年金(企業DB)と企業型確定拠出年金(企業DC)があります。
DBは、Defined benefit pension planの略で、DCは、Defined Contribution Planの略です。
defineは、定義する、意味を明確にするという意味で、benefitは利益、給付、恩恵という意味で、contributionは寄付、貢献という意味です。
確定給付年金は、加入した期間などに基づいて、あらかじめ将来の給付額が定められている年金制度です。運用責任は会社にあり、個々人に最適な運用ではなく、全体に最適な運用を目指します。
確定拠出年金の将来の給付額は、個々人の運用状況により変動します。一方で、毎月の拠出金額が決定している年金制度です。
ちなみに私の会社では、2016年に確定給付年金(企業DB)から確定拠出年金(企業DC)に制度が切り替わりました。DB制度からDC制度への移行に伴い、脱退一時金相当額をDC制度へ移換するか、積立掛金相当を一時所得として受け取るかを選択しました。
企業DCのメリット・デメリット
企業型確定拠出年金(企業DC)のメリット

・ 会社が事業主掛金を負担してくれる
・ 社会保険料の対象ではない
・ 加入者掛金は給与天引され、所得税や住民税がかからない(全額所得控除対象)
・ 拠出額の決定、投資先の決定を自身で行うことができる
・ マッチング拠出(加入者掛金)により、会社の拠出金額に上乗せして、自身で拠出できる
・ 原則60歳以降に年金または一時金で受け取る。受け取るときには税金がかかるが、一時金は退職所得で退職所得控除が適用され、年金は公的年金と同じ扱いとなり、雑所得で公的年金等控除が適用される
・ 転職の場合は、転職先のDC制度で運用を続けるか、転職先に企業型DCがない場合や専業主婦(夫)になる場合には、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移管し、運用を継続できる
確定拠出年金制度は、加入者が積立金の運用方法(預貯金・信託・株式・生命保険・損害保険等)を選定し、60歳以降にその運用実績を給付額として受け取れる制度です。 確定拠出年金には、個人型と企業型があります。個人で取り組む[…]
企業型確定拠出年金(企業DC)のデメリット

・ 拠出金額に上限がある
・ 60歳まで引き出せない
・ 投資の勉強が必要なのにもかかわらず、会社から投資勉強機会は形式的であり、自身で勉強が必要
口座管理費用
定年退職以降は、運用や年金を受け取るにあたり、口座を管理する費用がかかります。掛金を拠出している間は、この費用は会社が全額負担してくれています。
マッチング拠出制度
会社掛金に加えて、個人から拠出することができるマッチング拠出制度もございます。
個人から拠出した金額(給与天引)は全額所得控除対象です。
会社と個人が掛金を出し合うという意味でマッチング拠出制度と呼ばれています。
加入者掛金は法律上、事業主掛金を超えない範囲、かつ、事業主掛金と加入者掛金の合計が月額55,000円を超えない範囲で選択できるようになっています。
会社の福利厚生
言葉の説明をするのに、ずいぶんとスペースを要してしまいました。
もし、勤務している会社が企業型確定拠出年金を導入しているのであれば、会社の福利厚生です。60歳以降の自分自身に対する備えでもありますし、「その分、給与を上げて欲しいよね」とは言わず、ありがたく受け取っておきましょう。
将来の選択肢が増えると思うので、投資は色々やっていた方が良いと考えています。会社の負担で投資ができる、確定拠出年金を通して、色々勉強できると考えると、太っ腹な制度と思えます。
投資の経験という観点からは、自身の資産がどのように価値が変化しているかを毎日チェックすることも良い経験かもしれません。
掛金の運用はご自身で
企業型確定拠出年金の運用は自身で行います。自身で行いますといっても、投資信託商品を選択するという行為です。
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を1つにまとめて株式や債券など異なる銘柄や資産に分散して投資する仕組みです。 どのような株式や債券に投資するのかを運用の専門家に任せます。 多くの投資家から集めた資金をまと[…]
投資信託にかかる費用
信託報酬
「信託報酬」と呼ばれる運用中にかかる手数料がございます。どの投資信託にもかかる手数料ですが、パーセンテージは投資信託商品により違いがあります。
企業型DCですと、会社が運営管理機関、投資商品を選定しておりますが、転職をするなど、個人型DCに移行する際には、信託報酬を見比べて運営管理機関を選びたいところです。
信託財産留保額
「信託財産留保額」は、投資信託を解約する際に投資家が支払う費用のことです。一般的には0.3%程度で、商品によってはかからないものもあります。
確定拠出年金の経験を投資信託へ

毎月の掛金には上限が設定されています。加入者掛金は法律上、事業主掛金を超えない範囲、かつ、事業主掛金と加入者掛金の合計が月額55,000円を超えない範囲での選択になっています。そうすると、自身が60歳になるまでに拠出できる金額は、ある程度計算が可能です。
また、多くの運用会社が今の投資内容だった場合の60歳時点で受け取れる年金額をシミュレーションしてくれます。
ぜひ、加入時に受け取った書類の中から、ログインIDやパスワードを探して、運営管理機関のwebページにログインし、シミュレーションを実施して、60歳以降に受け取る年金額として十分かどうかを確認なさってみてください。
私自身は、942万円という結果であり(あくまでシミュレーション)、給与天引で強制的に毎月一定額を使えなくするという方法で、将来の自分へお金を回すには十分な金額になっているのではないかなという感覚でいます。
今の生活をちょっぴり豊かにするために
投資、貯金をした上でまだ投資ができるのであれば、確定拠出年金の経験を活かして、個人で投資信託を追加で実施することをおすすめします。
個人で実施する投資信託は、60歳まで解約できないという縛りはありません。縛りがないということは今使うこともできます。かつ、NISA、つみたてNISAを活用すれば税金の優遇を受けることができ、今の生活をちょっぴり豊かにすることができます。
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おわりに
最後に投資を始めるまでの考え方をご案内します。
01. 今万が一のことが起きたらに備えて生命保険を準備する
02. 将来に備えて年金を準備する
03. 今の生活を支えるための現預金の貯蓄を準備する
04. それでも投資に回せるお金があれば、投資を実施する
最低限の貯金は、手取り月給額×6ヶ月分を目安にします。
こちらで案内した順番が大切ですが、投資の情報を集めて、お金の勉強も進めて、投資を早くしたくてウズウズしているのに、貯金が手取り月給額×6ヶ月分もない方は、次のように考えてみてください。
今は貯金が手取り月給額×6ヶ月分もないけど、毎月○○万円ずつ、貯金に回せて、加えてボーナスのときには○○万円、貯金に回せる。
そして○年後には目標金額(手取り月給額)を貯められるから、この貯金計画に基づけば、毎月○○円ずつは投資に回せる
貯金だって、計画を作れば楽しめます。
年金は今の自分から将来の自分への贈り物です。60歳以降の自分の状況を想像してみましょう。ゴルフの翌日、今よりも筋肉痛がひどくなってるかな。お酒の量は減ってるかな。視力はきっと落ちるんだろうな。
会社の負担で将来の自分に向けて運用ができると考えれば、企業型確定拠出年金はかなり良い制度です。マッチング制度を利用し、会社が負担する金額を超えない範囲で自身も拠出できますが、自身が支払ったお金まで損することはよっぽどでもない限りありません。
これは従業員にとって、企業型確定拠出年金の最大のメリットであり、株式投資のデメリットのひとつである値下がりリスクを補っています。
若く働けるうちは、将来分も稼いでやるんだという気持ちで働くのが良いと思います。
将来の自分のためにと投資を行動した時点で間違いなくプラスです。
信託報酬は高いですが、会社の負担で支払ってもらっていると考えれば、ゼロです。
金額をどこまで増やすかは、運用されている投資信託商品を確認しましょう。もっと高い利回りが期待でき、かつ信託報酬が安い投資信託が他にあれば、会社の負担を最大限引き出す金額まで拠出し、それでも運用に回せるお金があるのであれば、他の投資信託へ投資しましょう。
シミュレーションをして、選択できる商品の口コミを調べて、その上で選択する投資商品を決定しましょう。
最初加入するとき、本社から指示された期日があって、ゆっくり調べている時間はないかもしれません。その場合には、何か選び、そのあと、理解を深め、投資商品を選び直すようにしましょう。短時間で選んだもので、将来受け取る金額を決めたままにしておくのだけはやめた方が良いです。
私の場合は、月額8,000円を自身で拠出し、会社から月額8,000円拠出してもらっています。
私の企業型確定拠出年金の位置付けは、60歳以降の生活の備えとして、会社の補助を受けながら、60歳時点で10百万円の資産にすることを目指すものです。
給与に変化がある都度、加入者掛金の見直し(事業主掛金の金額に合わせる)、運用商品の見直しを行なっています。そして、拠出額を負担してくれている会社に感謝して、本業を頑張ります。
最後までご覧いただきありがとうございます。
今回の記事が皆さまの企業型確定拠出年金の見直しを検討するきっかけになれますと幸いです。
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