従業員持株会に入った方が良い?日々の業務と株価の上昇が繋がるイメージが大切(仕組み・メリットetc)

ハワイの静かな時間

従業員持株会は、勤める会社の株式を会社から奨励金を受け取りながら、毎月一定額を購入していく制度です。

株式投資への理解を深めて自ら行動をおこすというよりは、会社側の従業員の財産形成として、あまり深く考えずに、従業員持株会へ加入している方も多いと思います。

また、従業員持株会加入の連絡が会社からあり、加入しようか、見送ろうかを悩んでいる方もいらっしゃると思います。

従業員持株会の仕組みや私の運用状況を、非上場企業の従業員持株会設立のお手伝いや私自身の持株会投資の経験を踏まえて、ご案内します。

従業員持株会の魅力(メリット)

メリットをご案内します

従業員持株会の魅力を、従業員にとっての魅力と会社にとっての魅力に分けて考えてみます。

従業員にとっての魅力

01. 奨励金

会社が従業員持株会への加入を促す奨励金。わずかに感じるかもしれませんが、購入額の3%〜10%程度が支給される奨励金は魅力的です。

02. 財産形成

株式を買う売るで儲けを得るというよりは、ほどほどの貯蓄と思うくらいが良いと思います。

03. 自身の仕事の結果と株式価値上昇の紐付き

業績が上がれば、株式の価値が上がる一因になります。

日々の仕事と株価を結びつけることは、理屈は分かるけど、具体的にイメージしづらいという方が多いと思います。

それでも、会社の中にいながら、自社の株価への影響を考えられるのは、他社の株式へ投資するよりも、リスクコントロールの点から、魅力的に映る方もいるかもしれません。

04. インサイダー取引対象外

投資家の投資判断に重大な影響を与える未公表の事実を知って、自身の利益を図り、株式の売買を行うことをインサイダー取引といいます。

その事実を知らない投資家が不利な立場になることから、金融商品取引法で禁止されています。

インサイダー取引は、ご自身、そして会社を思わぬ窮地に追い詰めることになります。

従業員持株会を通した株式の売買は、インサイダー取引の対象外です。

会社にとっての魅力

01. 従業員の企業経営への参加意識向上(モチベーション向上)
02. 雇用の確保
03. 株主構成の安定

従業員持株会は、会社側にとってのメリットが大きいようにも考えられます。また、従業員持株会の規約には、次のような目的が記載されます。

「従業員が従業員持株会への加入を通じ株式を保有することにより経営参加意識を高め会社の業績の伸長に積極的に努力し、雇用の安定を確保するとともに財産形成を図ることを期して会社株式の保有を奨励し、その実行を容易ならしめることを目的とする。

従業員持株会の心配なところ(デメリット)

デメリットをご案内します

従業員にとって従業員持株会の心配なところ(デメリット)を考えてみます。

01. 値下がりリスク

株式投資ですので、値下がりリスクはあります。私の運用状況も今はこの値下がりリスクが顕在化している状態です。

ただ、あきらめているわけではなく、日々の業務を通して、取り戻したいと私は考えています。あきらめずに、自分の業績貢献で取り戻せる可能性があるのは、従業員持株会のメリットと言えるかもしれません。

しかしながら、従業員持株会に加入していて、自身の業務と株価を結びつけて、日々の仕事に向かえる方は少ないと思います。

つまり、会社側も従業員のモチベーションアップを従業員持株会のメリットにあげているものの、加入した後に、そのメリットを実現させようという取り組みは多くの企業で欠けているように思います。

02. 好きな時にすぐ売却することができない

従業員持株会を通して、株式を保有する場合には、売却の際に従業員持株会へ売却の意向を申し出なければなりません。

スマートフォンでクリックひとつで売却できる手軽さはないですし、事務局または上司へ売却の理由を説明しなければと要らぬ心配をしなければなりません。

03. 労働と投資が集中してしまう

給料に加えて、財産形成も会社に託すことになります。

そのため、リスクの分散を投資の判断軸にしている場合には、大きなデメリットです。

会社の株価が右肩上がりで推移するのであれば、給与も保有している株式の価値も両方が上がるでしょう。

一方、会社がうまくいかないときは、給与も株式の評価も共に下がってしまいます。

従業員持株会の仕組み

01. 規約

従業員持株会のルールは、規約や細則で決められています。

02. 少額から買い付け

買付単位が1,000円単位だったりと手軽に買い付けができます。

03. 奨励金

会社から奨励金として、拠出額の3〜10%程度の補助が出ます。事務委託手数料もあわせて負担してくれます。

ただし、奨励金と手数料は給与課税の対象です。

04. 給与天引

給与振込みの前に、持株会拠出金額を差し引かれます。自身の感情に左右されずに投資が継続されます。

05. 配当金

配当金を受け取ります。会社によりますが、配当金は再投資される場合もあります。

06. 運用状況の確認

自身の運用状況の確認は、半期に一回の持株会から会員に向けての通知、またはweb画面でタイムリーに把握できるように設定されています。

定期的・継続的な投資であるため、加入したら、放ったらかしにしている方も多いと思いますが、自社の株価推移とともに、運用状況も都度確認されることをおすすめします。

従業員持株会のルールは、各社の規約、細則により定められています。加入前に、自社の持株会の規約、細則を読み込んで、メリットとデメリットを把握しましょう。

特徴的な従業員持株会の設計例

私自身が設計に携わったある非上場会社の特徴的な従業員持株会を紹介します。

経営者の従業員に対する思いが詰まったこの従業員持株会は、従業員にとっては、全くデメリットのない設計となりました。

臨時賞与支給

臨時賞与を支給して、初回の株式購入資金を全額、会社が負担していました。

手取り額が株式購入金額になるように税金計算まで行いました。

退会時の買取価額

退会時には、購入時の価額で買い取るルールにしていたので、臨時賞与支給額は満額、手元に戻るように設計しました。

上記デメリットの値下がりリスクを会社負担にすることでカバーしています。一方でメリットのひとつである財産形成、株式の値上がりによる価値増加は獲得できないようになっています。

デメリットを会社が負担する分、従業員にはメリットをひとつ我慢してもらう仕組みを採用しました。

配当金

売却したときに得する仕組みではないのですが、配当金は毎年受け取ることができます。日々の業務の成果は、配当金額の多い・少ないに反映されます。

追加取得

非上場会社であることから、日々、株式の売買が行われているわけではないため、株式の追加取得は、数年に一度という仕組みを細則に織り込みました。

対象者

会社側が相応の負担をすることになるため、取得できる従業員に、勤続年数と年齢の制限を設けることにしました。

従業員からすると、会社負担で所有した株式から毎年配当を受け取ることができて、退会するときには、取得価額分のお金を受け取れることを保証してもらう設計でした。

従業員向けの従業員持株会導入説明会に同席した際、経営者が「従業員持株会の導入は、長年の夢でありました」というお言葉をおっしゃっていたことはとても印象的でした。

私の運用状況

私自身が従業員持株会を通じて保有する株式を例にとって、株価の変化がもたらすことをご案内していきます。

私は従業員持株会へ加入し、毎月5,000円、会社から250円(拠出額の5%)の奨励金を受けながら、総額約30万円、私が勤める会社の株式を購入してきました。

約30万円支払ってきたことで保有している株式数は151株です。

今の株価は1,200円なので、私の保有している株式の価額は、151株×1,200円=181,200円です。

そうなんです、今保有株式を売却したら、30万円−18.1万円=11.8万円、損してしまいます。

売却せずに持ち続け、株価が1,986円(30万円÷151株)を超えてきたときに売却すれば、支払ってきた金額よりも売却して得る金額の方が多くなります。

株価が2,500円を超えていた時期もありましたので、そのときに毎月ドル・コスト平均法※で定期的・継続的に購入していた分が大きな損になっているのでしょう。

まことに残念ではありますが、私の場合は従業員持株会のデメリットのひとつである値下がりリスクを実現してしまっています。

※ ドル・コスト平均法とは、一定金額で定期的・継続的に投資する方法です。価格が高い時は購入数量を少なく、安い時には多く購入します。

おわりに

最後までご覧いただきありがとうございます。私の運用状況では残念なところをお見せしてしまいました。

投資の目的が、財産形成、本業のモチベーションアップであり、毎月の購入金額を無理のない範囲に設定して、日々の業務と株価の上昇が繋がるイメージを持って奨励金というメリットを享受していくのであれば、従業員持株会への加入をおすすめ致します。

一方で従業員持株会の仕組みに、ひとつでも疑問があれば、分散投資の観点から、加入を見送る、もしくは退会することをおすすめします。

従業員持株会の良くないところは、おそらく加入させたら加入させっ放しの会社が多いところだと考えています。

会社にとっての従業員持株会の魅力のひとつである従業員のモチベーション向上を実現するためには、会社側が従業員に日頃から株式を持っていることを思い出してもらう働きかけが必要だと思います。

株式を保有していることと毎日の仕事を完全に切り離している従業員が多いのだと思います。

何はともあれ、本業を頑張る。これにつきるかと考えます。

副業が一般的になりつつある今、私のおすすめは、本業+副業を頑張るですが、本業を頑張れない中で、何から何まで自分でこなす必要がある副業を頑張り切るのは難しいのではないかと思います。

本業を頑張ることは、生活のためでもあり、副業を実らせるためでもあります。一方で副業の経験は本業のためになることもあります。

今回の記事が皆さまの従業員持株会の加入判断や設定の見直しのお役に立てますと幸いです。

関連記事

「勤める会社の企業型確定拠出年金に加入してるけど、どういう仕組みだったのかを覚えていない」、「年に1度、運営管理機関からのお知らせを見るたびに思い出すだけ」、そういった方が多いと思います。 加入時の説明会では、生活の[…]

関連記事

投資信託は、多くの投資家から集めた資金を1つにまとめて株式や債券など異なる銘柄や資産に分散して投資する仕組みです。 どのような株式や債券に投資するのかを運用の専門家に任せます。 多くの投資家から集めた資金をまと[…]

関連記事

NISAとつみたてNISAという言葉を聞いても、自身とは関係ないと考えて、仕組みを知ろうとしてこなかった方に向けて、あらためてNISAとつみたてNISAの仕組みをご案内していきます。 NISAとつみたてNISAは、株[…]

関連記事

金融資産構成を日本・アメリカ・ユーロエリアで比較すると、日本人が株式投資に対して、あまり関心が高くないことが明らかになります。 日本銀行調査統計局の2020年資金循環の日米欧比較によると日本の家計における金融資産のう[…]

関連記事

ハワイ旅行に向けてお金を節約し、投資していく方法を共有するファイナンス教室を始めます。 本業があって、1年や2年に1度ハワイ旅行に行けるような資金を作りたい方に向けた節約・家計見直し術のご案内です。 このファイ[…]

最新情報をチェックしましょう!